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半導体物理

GaNの光電気化学反応

投稿日:2018年10月27日 更新日:

LEDやパワーデバイスに使われているGaNの光電気化学反応について紹介します。ここでは、光電気化学セルと光電気化学エッチングの2つを紹介します。

GaNを用いた光電気化学セル

光電気化学セルとは?

光電気化学セルとは太陽電池の一種で、半導体電極に光を当てて電子正孔対を発生させ、水の分解反応を起こし、電流あるいは水素を取り出します。光電気化学反応による水分解の最初の報告は、1972年の本多・藤嶋効果[1]です。この報告では半導体電極にTiO2を用いています。

光電気化学セルの電極の組み合わせとしては、

・n型の半導体電極(アノード)と金属(カソード)

・n型(アノード)とp型(カソード)の半導体電極

・p型の半導体電極(カソード)と金属

の3通りが考えられます。n型の半導体電極と金属の組み合わせの光電気化学セルの原理について説明します。

光電気化学セルの原理

まず、n型の半導体電極に光を照射します。このとき、光のエネルギーが半導体のバンドギャップよりも高いエネルギーであれば、電子正孔対が発生します。発生した電子は導線を伝って、金属の電極に流れます。金属の電極では電子と水が反応して水素とOH-が発生します。ここで発生したOH-は電解液の中を移動し、n型半導体の電極で、正孔を受け取り水と酸素を生成します。この一連の反応の中で、電流を取り出す、あるいは水素を取り出すのが光電気化学セルの原理になります。

では、半導体の電極はどんな半導体でもよいのでしょうか。

まず、n型の半導体の表面で酸素が発生する反応が起こるためには、表面で半導体の価電子帯が酸素発生電位よりも低い位置にある必要があります。一方で、水素発生電位よりも伝導帯が高い位置にないと、水素の生成も起きてしまい、電流を取り出すことが出来なくなります。したがって、半導体のバンド端が水素、酸素発生電位をまたいでいる必要があります。

また、電解液で反応して表面が変質してしまうと、電極表面での反応が起きなづらくなってしまうため、化学的に安定な半導体を用いる必要があります。

これらを満たすことのできる半導体材料の一つがGaNになります。

GaNを用いた光電気化学セル

GaNが光電気化学セルの電極に使われますが、その理由としては次のようなことがあげられます。

・バンドギャップが3.4eVと大きく、水素・酸素発生電位をまたいでいる。

・同じIII族元素のAl, Inとの混晶を利用することで、紫外から赤外までの広い範囲の光を吸収することができる。

・化学的に安定で、エピタキシャル成長技術の発展に伴い、結晶性のよい試料を作ることが出来る。

・Mgをドープするp型はまだ課題があるが、Siをドープするn型は高品質なものができている。

これらの特徴からn-GaNを電極に利用した光電気化学セルの研究が行われています。

しかし、n-GaNにも欠点があります。それは、n-GaN表面での酸素発生の反応が遅く、表面に正孔がたまってしまうことです。たまった正孔は、次のような反応を引き起こし、電極の酸化が起きてしまいます。

2GaN + 6h+ → 2Ga3+ + N2

2Ga3+ + 6OH → Ga2O3 + 3H2O

酸化膜がつくと酸素発生の反応が進まなくなるため、この酸化膜を電解液に溶解させることが、光電気化学セルでは大事になります。逆に、GaN電極がエッチングされきるまでが寿命になります。

GaNの光電気化学エッチング

GaNを用いた光電気化学セルの課題の一つに電極であるGaNの表面が酸化することがあります。光電気化学セルでは電解液に酸化膜を溶解させることで、GaN表面の酸化膜によって反応効率が下がることを防いでいます。

逆にこのGaN表面が酸化した後、溶液によって酸化膜を除去するという工程を半導体デバイス作成におけるエッチングプロセスに利用しようという試みが行われています。

例えば、サイオクス社が論文を発表しています[2]。また、この論文はSemiconductor Todayでも紹介されています[3]。彼らは電解液にNaOHを使い、光を当てながらGaN表面の酸化とエッチングを繰り返すことで、pnダイオードのエッチングや1μm以上の深堀エッチングを実現しています。エッチング深さは流れた電流量で正確にモニタすることが出来るため、所望の深さでエッチングを止めることも可能とのことです。深堀エッチングはパワーデバイスで用いられているスーパージャンクション構造に応用することを考えているようです。

まとめ

GaNの光電気化学反応について紹介しました。太陽光発電として使用したり、エッチングに使用したりと同じ反応でも違う用途に使えることが面白いですね。

最後までお読みいただきありがとうございます。それではまた次の記事でお会いしましょう。

参考文献

[1] A. Fujishima and K. Honda, “Electrical Photolysis of Water at a Semiconductor Electrode,” Nature 238, 37-38 (1972).

[2] F. Horikiri, et al., “Excellent potential of photo-electrochemical etching for fabricating high-aspect-ratio deep trenches in gallium nitride”, Appl. Phys. Exp. 11, 091001 (2018).

[3] http://www.semiconductor-today.com/news_items/2018/aug/hosei_230818.shtml

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