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ダイヤモンドよりも価値がある?カルメルタザイト(カルメルサファイア)とは?

最近、イスラエルのカルメル山で新しい鉱石が発見され、 International Mineralogical Association (“IMA”)によって2019年1月7日に新種の鉱石と認められました。

地球上には現在、5500種類以上の鉱石が存在し、毎年約100種類の新たな鉱石が発見され - Yahoo!ニュース(Forbes JAPAN)
ダイヤモンドよりも高価になる可能性の新鉱石、イスラエルで発見(Forbes JAPAN) ... - Yahoo!ニュース

このカルメルタザイトと名付けられた新しい鉱石は、コランダムの中から発見された鉱石で、写真のように美しい青色の鉱石です。

カルメルサファイアの写真(Shefa YamimのHP[1]より引用)

このカルメルタザイトはイスラエルのShefa Yamimという会社がカルメルサファイアとして売り出すことを計画しています。その希少性からダイヤモンドよりも高価で取引されるのではないかと予想されています。そんな注目のカルメルタザイトについて、詳しく見ていきましょう。

カルメル山

カルメル山は、イスラエル北部にある山で、標高は525m, 南北39kmにわたって広がる丘陵地です。カルメル山と日本語では訳されていますが、正しい発音は、”カメール”だそうで、鉱石の名前もカルメルタザイト、カルメルサファイアと表記していますが、発音としてはカメールタザイト、カメールサファイアのほうが正しいと思います。

カルメル山は石器時代の遺跡が見つかっていたり、キリスト教の聖地のひとつになっている山です。日本の富士山のように、イスラエルでは有名な山なのでしょう。

コランダムとは?

まずはコランダムについて説明します。
コランダムは酸化アルミニウム、Al2O3の結晶です。コランダムの結晶構造をもつ鉱石には、サファイアやルビーがあげられます。
サファイアとルビーが同じ結晶構造であることは意外と知らない人もいるかもしれません。
サファイアとルビーはコランダムに含まれる不純物の種類が違うため、それぞれ青色と赤色と違う色に発色します。ちなみに、サファイアは鉄、ルビーはクロムを不純物として含んでいます。不純部が含まれないコランダムは透明です。この透明なコランダムも一般的にサファイアと呼ばれます。(サファイア基板など) 透明ならサファイアでなくてもルビーと呼んでもいいような気もしますが。。。

コランダムの結晶構造は下図のような構造です。

図の赤色が酸素、グレーがアルミニウムになります。結晶系としては三方晶系の結晶になります。コランダムのモース硬度はダイヤモンドに次いで大きく、非常に硬い結晶です。

カルメルタザイトはこのコランダムの中から発見されました。それを示したのが次の図です。[2]

上の図は、カルメルタザイトを含むコランダムの結晶のSEM画像です。SEM画像で白く見えている部分がコランダムとは違う結晶の領域であり、下の図でその部分を拡大し、色分けしています。このようにコランダムの内部でカルメルタザイトが形成されています。

カルメルタザイトの結晶構造

カルメルタザイトの結晶構造を説明します。カルメルタザイトの分子式は、ZrAl2Ti4O11です。結晶構造を図に示します。[2]

カルメルタザイトはM7O11(Mは金属原子を表します)で表現されます。これに近い結晶構造としてはスピネルがあります。スピネルはM9O11で表現されます。

スピネル型の構造では、原子は[111]方向にABCABCと積層していきます。これに対して、カルメルタザイトは六方晶系でみられる積層の仕方、すなわち[001]方向にABACBCと積層しています。その結果、スピネルからいくつかの原子が抜けたような構造になっています。これを表したのが次の図になります。[2]

図のaがカルメルタザイト、bがスピネルの構造を表しています。図のaでは上方向が[001]であるのに対して、図bでは[111]になっています。このようにスピネルの結晶構造に近い形をしていますが、わずかに違う形をしていることがわかります。

カルメルタザイトはこれまで宇宙でしか存在が確認されていなかった構造であり、コランダムの内側という特殊な環境だからこそ形成されたものなのかもしれません。

カルメルタザイトの価値は?

カルメルタザイトの価値ですが、コランダムの内側に形成されるという特殊性と、まだイスラエルのカルメル山でしか見つかっていないという希少性から値段はかなり高くなることでしょう。色も深い青色できれいな色をしています。

最近では人工のダイヤモンドが天然のダイヤモンドと区別がつかないレベルになっているということですから、ダイヤモンドの価値よりも超えるのではないでしょうか。もっとも、人工ダイヤが普及すればするほど、天然ダイヤ(ちゃんと証明できるもの)の価値は逆に跳ね上がる可能性もありますが・・・

個人的には、透明なダイヤモンドよりも色付きの宝石のほうが好きです。

参考URL・参考文献

[1] Shefa Yamimのカルメルサファイアの紹介ページ
https://www.shefayamim.com/carmel-sapphire

[2] Griffin, W.L.; Gain, S.E.M.; Bindi, L.; Toledo, V.; Cámara, F.; Saunders, M.; O’Reilly, S.Y. Carmeltazite, ZrAl2Ti4O11, a New Mineral Trapped in Corundum from Volcanic Rocks of Mt Carmel, Northern Israel. Minerals20188, 601.

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