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【読書感想文】ホモ・デウス

Unsplash / Pixabay

ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳のホモ・デウスを読みました。この本の著者ユヴァルは、サピエンス全史が世界的なベストセラーになっており、このホモ・デウスはその次の作品になります。ホモ・デウスは上下巻からなるボリュームある大作になっています。

まず、人類は今後どういう課題に取り組んでいくのか、定義づけするために、これまでに解決してきた課題について説明しています。人類は戦争、飢饉、疫病といった問題を完全になくすことはまだできていませんが、かなりうまく抑え込めていると言えます。これは、20世紀の科学技術の発展によってもたらされたものです。これらの問題は20世紀の人類にとって解決したい重要な課題でした。これを解決してしまった今、人類はどこへ向かうのだろうか。

著者は、科学技術、なかでもバイオテクノロジーとAIによって人類は神の領域を目指すとしています。中でもIoT (Internet of Things)によって、ありとあらゆるモノ・人がインターネットにつながる世界が来ることで、インターネットが自分以上に自分自身のことをよく理解するようになり、まるで神からの啓示をうけるかのようにインターネットからあらゆる答えをもらうようになるでしょう。

ただし、人間がインターネットの一部になってしまうと、社会にとって無価値な人間が生まれる可能性があると警鐘を鳴らしている。人間の意識も欲望も、生物学的なアルゴリズムでしかなく、それを科学技術によって再現できるのであれば、”個人”や”個性”といったものに価値がなくなってしまうでしょう。最後に著者はこの本は予言ではない、望ましくないと感じる未来が実現しないように、各個人が行動すべきだと述べている。

人間がインターネットの一部になるという現象は、すでに起き始めていると私は感じている。スマートフォンを通じて、私たちの日常生活の様々な情報が記録されている。例えば、何を検索したか、どんな動画を見たのか、どのくらい運動したのか、などである。最近はアップルウォッチのようにスマートウォッチと呼ばれるデバイスを身に着け、心拍数の情報まで管理できるようになっている。加えて、Alexaのようにスマートスピーカまで登場し、私たちが何かを知りたいと思ったら、すぐに答えが返ってくるようになっている。あるいは、スマートホームになっていて、自分でスイッチを入れる代わりに自動でスイッチを入れてくれているだろう。

もう一つ、人がインターネットの一部になってきていると感じるのが、SNSのブームである。今や、インスタグラムにインスタ映えする写真を載せることに躍起になっている人がたくさんいる。まるで、現実を自分の目で見ずに、スマホや写真を通してでしか見ないと言わんばかりで、インターネットに上がる写真こそ現実であると思っているように見える。

これこそ、ホモ・デウスの中で、著者が述べていた”データ教”という新しい宗教の一例ではないかと私は考える。インターネット黎明期には、インターネット上の情報は、本や新聞といった情報と違って、誤りを多く含むものだから、うのみにしてはいけないと、誰もが思っていた。ところが、今の若者たちはインターネットの情報に間違いはないと信じているようである。だからこそ、簡単にtwitterからのデマやフェイクニュースに騙されていると思う。もっとも、インターネットの情報に騙されやすいのは、デジタルネイティブの若者だけでなく、最近インターネットを使い始めた高齢者も含まれると私は考えている。

これだけ情報があふれるいま、何が本当に有益な情報なのか見極める目を養う必要がある。そうでないと、将来インターネットに支配され、情報をインターネット上にアップすることしかできない無価値な人間になってしまいそうである。これからのインターネットとの付き合い方を考えさせられる良い本であった。ぜひ若い世代に進めたい一冊である。

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