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モバイルSuicaはスマホの電源が入っていないと使えない!

mohamed_hassan / Pixabay

近頃、キャッシュレス決済の普及が進んでおり、クレジットカードやSuicaなどの交通系ICカードに加えて、PayPayや楽天Payなどスマホで決済できるサービスが増えてきています。(7Payというような失敗例もありましたが・・・)
様々なキャッシュレス決済方式が出てきていますが、カードをかざすだけで支払いができてしまうSuicaなどの交通系ICカードの便利さは他のサービスより優れている点の一つです。先にお金をカードにチャージする必要はありますが、Viewカードと連携すればオートチャージできますし、おサイフケータイ機能付きのスマホにモバイルSuicaを登録すれば、スマホをかざすだけで支払いができます。

かくいう私もモバイルSuicaを使っているのですが、ふと疑問に思ったことがあります。それは、モバイルSuicaはスマホの電池が切れたら使えなくなるのだろうか?ということです。カード式のSuicaは電池を搭載しておらず改札やレジにかざすだけで処理ができています。では、スマホの場合はどうなのでしょうか?

カード式のSuica

カード式のSuica(JR東日本HPより)

まずは、カード式のSuicaについてみてみましょう。Suicaを改札機やレジにかざすだけで支払いができます。このとき、カードと改札機の間では、信号のやり取りが行われます。信号をやり取りするということはカードに電流が流れていることになりますが、カードに電池がついている様子はありません。それでは、いったいどうやってカードに電気を供給しているのでしょうか。

電磁誘導による電流で動作

正解は、ファラデーの電磁誘導を使ってSuicaの回路に電流を流し、動作させています。ファラデーの電磁誘導とは何か?ですが、これはコイルの中の磁束を変化させると、コイルに起電力が生じて電流が流れるという現象です。理系の方であれば、高校生の頃に習った、あるいは大学の電磁気学で習ったことでしょう[1]。

電磁誘導の詳細は別の記事に譲るとして、Suicaのカードの回路をみてみましょう。見るとコイルのように円形の導線とそれにつながるICチップで構成されていることがわかります。

Suicaの内部回路[2]

すなわち、カードリーダの上にかざすことで、カードリーダからの磁場によってカードのコイルの内側の磁束が変化して起電力が生じ、電流が流れます。その電流によってICチップに書き込みが行われます[3]。

このように電磁誘導という現象を使っているために、Suicaのカードは電池が無くても情報の書き込みややり取りが可能になっています。
それでは、スマホの場合はどうなっているのでしょうか?

モバイルSuica

モバイルSuicaの場合、カードリーダとの通信にはNFC、Near Field Communication機能を使用します[4]。NFCというのは、Suicaで使われているFelicaやその他の同様の無線通信規格を統合した通信規格で、現在では多くのスマートフォンがこれに対応しています。

電源を切っていると使用できない!

スマホのNFCも、Suicaと同じようにアンテナ部分とICから構成されています。アンテナ部分はコイルになっているため、改札機にスマホをかざせば、電磁誘導によってICに情報への書き込み、改札機への情報の送信をすることができます・・・が、スマホの電源を切っていると回路に十分な電流が流れず、書き込みができません。以前、スマホの電源を切ったまま、バスに乗るときにスマホをかざしたことがありますが、反応しませんでした。

電池切れにしないことが大事

残念ながら、カード式のSuicaと違って回路に十分な電圧を加えている必要があるため、電池切れにならないよう気を付けながら使うしかないのが現状のようです。対策としては、モバイルバッテリーをもつことが一番有効だと思います。

まとめ

カード式のSuicaは電磁誘導を使って回路に電流を流しており、回路も小さいため電源をカードに接続しなくても改札機やレジで支払いをすることができます。

モバイルSuicaもスマホにあるNFCという機能を使ってカード式と同じことが出来ます。NFCも消費電力は小さいですが、電源を入れていないと回路に電流が十分に流れません。

そのため、スマホの電源を切っていてもモバイルSuicaで支払いをすることはできません。バッテリーの残量が0%にならないように気を付けながら使うか、モバイルバッテリーを持ち歩く必要があります。

参考

[1]電磁誘導は電磁気学で習う内容で、数式で表現すると、

と表されます。は誘導起電力[V],コイルの巻き数を表し、が磁束の変化を表しています。
電磁誘導は、その他にも様々な電子機器に利用されています。

[2]Suicaの物理 https://note.mu/3193note/n/nd626bb5c4f7f

[3]Suicaに使用されているのはSonyのFelicaという技術で、日本独自の非接触ICカード規格です。次のページで詳しく説明がされています。
https://www.sony.co.jp/Products/felica/about/index.html

[4]NFCについては次のページが参考になります。

https://time-space.kddi.com/ict-keywords/20190222/2577
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/article/FEATURE/20110420/191254/

NFCの回路に求められる電子部品という観点で、次のページは解説されています。

https://www.murata.com/ja-jp/products/emiconfun/inductor/2017/04/21/20170421-p1

NFCを使うためのICタグについてはこちらの文書が参考になります。

https://industrial.panasonic.com/content/data/SC/ds/ds8/c2/APN_NFC-TAG_JP.pdf

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