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QLEDって何?最新ディスプレイの技術

最近(2020年春)、テレビを買い替えようと思って近くの家電量販店に行った時のこと。どのテレビも4K, 8K対応と宣伝文句が書かれているのを見て、そんな高解像度で見たいコンテンツをテレビが供給できていないじゃんとか思いながら、店内を歩いていた時にふと、QLEDという言葉目にとまった。”QLED? OLEDの間違いではないのか?”と思ったが、調べてみると別物だった。

QLEDってなんの略??

そもそもQLEDとは、Quantum dot Light Emitting Diode, 日本語にすれば量子ドット発光ダイオードの略である。LED、発光ダイオードは日常生活にすっかり浸透しているが、電気を流すと光る素子で、半導体で作られているものが多い。(LEDは日常で使われすぎていて、Light Emitting Diodeの略称ではなく、LEDという単語だと思っている人も多いかもしれない。。。)

ちなみに、OLEDはOrganic Light Emitting Diodeの略で、有機発光ダイオードである。いわゆる有機ELと呼ばれるディスプレイである。有機EL(EL: Electric Luminescence)はあくまで電気を流した時に発光するという物理現象を現した言葉であり、有機ELを利用した発光ダイオードということで、OLEDという言葉が使われている。

QLEDディスプレイの仕組み

LEDは電圧をかけて電子を発生させることで発光している。いわゆるエレクトロルミネッセンスと呼ばれる現象で、有機ELのELはこのエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)の頭文字である。LEDで主に使われているのは半導体で、材料や構造を変えることで、任意の波長の光を作り出している。有機ELの場合は、半導体の代わりに有機物を使っているのが特徴である。

一方で、市販されているQLEDディスプレイは光を量子ドットに照射し、別の波長の光に変換することで色を作り出している。
いわゆるフォトルミネッセンス(PL: Photo Luminescence)と呼ばれる現象を利用している。
ELと違って、発光させるために電圧を加えていない。量子ドットに紫から青色の光を照射し、それをRGB三つの波長の光に変換している。

量子ドットによる波長変換のイメージ(https://www.nanosysinc.com/quantum-dot-basics/)

QLEDディスプレイのメリット

従来の液晶ディスプレイでは、白色のバックライトを波長フィルタに通し、それぞれRGBの光だけを取り出し、その後液晶のフィルタによってオンオフを切り替える。
また、白色LEDというのは青色LEDの上に蛍光材料を塗布し、蛍光材料に青色の光を当てて赤から緑の光をフォトルミネッセンスによって発生させている。
そのため、赤と緑の光は強度が青色よりも落ちるし、波長も単一の波長ではない。光の波長が単一でないということは色がシャープにならないということである。

一方で、QLEDディスプレイの構造は、バックライトを量子ドットに照射し、PLによって緑、赤色の光に変換する。その後液晶のフィルタによってRGBそれぞれの光のオンオフを切り替える。
波長フィルタの代わりに量子ドットを使うことのメリットはRGBの光を単色化することができるということがあげられる。
量子ドットの場合、フォトルミネッセンスによって発生する光の波長は単一になるため、色がよりシャープなディスプレイを作ることができる。
加えて、液晶ディスプレイとほぼ同じ構造のため、有機ELよりも安価に作ることができる。

個人的な感想

QLEDが量子ドットを使っていると知り、初めはELでの発光を想像した。数nmのサイズの量子ドットをRGBの三種類、きれいに格子状に成長することができたのかと、非常に驚いた。しかし、PLを使っているということで、家電量販店で売られるようなテレビにそこまで難しい技術使わないよね、と納得した。
4K, 8Kといった高精細かつリーズナブルな価格のディスプレイとして非常に期待できるなと思った。

一方で、ウェアラブルデバイスのディスプレイ用に電圧で発光する量子ドットLEDは研究されている。また、量子ドットレーザーは網膜ディスプレイへの応用に向けて研究されている。

難しい技術であるが、VCSELのように広く普及してほしいと思っている。

参考ページ:https://kakakumag.com/av-kaden/?id=14978

補足:発光の原理をほんのちょっと詳しく

発光は物質の中で電子と正孔が再結合するときにおこります。この電子と正孔のペアを電圧によって発生させるのがエレクトロルミネッセンス、光によって発生させるのがフォトルミネッセンスである。発生した電子と正孔の結合効率を上げるためにデバイスの材料や構造が最適化されている。

補足:VCSEL

いわゆる面発光レーザーで、レーザーの集積化が可能なことが大きな特徴。デバイス構造の複雑さから、実用化は難しいと考えられていたが、今ではiPadなど顔認証システムのカメラに使用されている。

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