MIS構造において、一般的には絶縁膜は1種類の単層膜だが、2つの異なる絶縁膜を積層した構造をとる場合もある。そのときのフラットバンドシフトの計算と電圧をかけた時に絶縁膜の間に蓄積する分極電荷を計算する。
フラットバンドシフトの計算
まず、一般的なMISキャパシタ(絶縁膜は1種類)について考える。MISキャパシタにおけるフラットバンド状態は、半導体表面のポテンシャルがゼロの状態である。フラットバンド状態になるには、金属と半導体の仕事関数差
であらわされる。
で計算することができる[3]。
絶縁膜が単層の場合、絶縁膜と半導体の界面にのみ電荷が存在するとすると、
となる。
次に、2層の絶縁膜の場合を考える。金属/絶縁膜1/絶縁膜2/半導体のようになっているとすると、フラットバンドシフトは次のようになる[4]。
式(2)を3つの場合について解いてみる。絶縁膜中の電荷
①
②
③
実際には3つの状態のうちのどれかを断定することは難しく、絶縁膜単層の場合と比較しながら決めていくことになる。
絶縁膜界面に蓄積する界面分極電荷
2層の絶縁膜の場合、電圧をかけると2つの絶縁膜間で電流の流れやすさが異なるため、界面に電荷が蓄積される。各絶縁膜にかかる電界を
とあらわされる。ガウスの定理
この場合の分極は界面電荷
となる。
参考文献
[1] Bonilla, R. S., Reichel, C., Hermle, M., & Wilshaw, P. R. (2015). Erratum: “On the location and stability of charge in SiO 2 /SiN x dielectric double layers used for silicon surface passivation” J. Appl. Phys. 115 , 144105 (2014). https://doi.org/10.1063/1.4915629
[2] https://sciencompass.com/phys-engineer/semiconductor_physics/gan_debye-length_doping
[3] S. M. Sze, “Physics of Semiconductor Devices” 2nd ed. Ch.4.
[4]Abbott, R. A., & Kamins, T. I. (1970). Sodium migration through electron-gun evaporated Al2O3 and double layer Al2O3SiO2 structures. Solid-State Electronics, 13(5), 565–576. https://doi.org/10.1016/0038-1101(70)90137-1