X線回折測定をするうえで、消滅則を把握することが大事です。ここではオンラインで公開されている結晶構造データベースを使って、消滅則を調べる方法について紹介します。
消滅則とは
X線回折における消滅則とは、結晶のある指数面に対してX線強度がゼロになることで、強度がゼロになる面は規則性をもちます。規則性は空間格子と対称操作によって決まっており、結晶構造のデータをみると、各空間群に対して消滅則の表がついています。この表をみて、自分が調べたい結晶の消滅則を把握します。
結晶構造を調べる
まず初めに調べたい結晶の結晶構造を調べます。結晶構造はこちらのサイトで調べることができます。
http://rruff.geo.arizona.edu/AMS/amcsd.php
例えば、GaN(六方晶)について調べた結果がこちらになります。
この表をみると、GaNの空間群は
続いて空間群の消滅則を調べます。
空間群の消滅則を調べる
空間群の消滅則はこちらのページで調べることができます。
https://www.cryst.ehu.es/cryst/get_hkl.html
先ほどのGaNの空間群である、
この表の一番右の列に消滅則が書かれています。消滅する指数面ではなく、回折が起こる指数面を記載していることに注意します。
一番上の行が一般位置に原子がある時の消滅則で、その下が特殊位置に原子がある場合の消滅則です。原子が特殊位置にあると、その特殊な消滅則が一般的な消滅則に加わります。
GaNの場合は、Ga, N原子がどちらも特殊位置、(1/3, 2/3, z)にあるため、その特殊な消滅則が加わります。したがって、GaNの消滅則は、
l = 2n または h – k ≠ 3nのときに回折が起こる
ということが分かります。
GaN以外にもSi, GaAsの消滅則も下の表にまとめておきます。
空間群 | 観測可能 | 消滅 | |
GaN(hexagonal) | P6_3mc | l = 2n
h + 2k ≠ 3n |
l ≠ 2n and h + 2k = 3n |
Si(diamond) | Fd3m | h, k, l all odd
h, k, l all even and h + k + l = 4n |
h, k, l mixed odd or even
h, k, l all even and h + k + l ≠ 4n |
GaAs(zincblend) | F-43m | h, k, l all even or all odd | h, k, l mixed odd or even |