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第一原理計算(Quantum Espresso)によるフォノン計算

第一原理計算によるフォノン計算についてまとめる。
計算に使用するソフトウェアはQuantum Espressoである。

フォノン計算方法

フォノン計算の流れ

フォノン計算は次のように行う。[1]
1. scf計算 (pw.x)
2. 粗いq点メッシュ上のdynamical matrixを計算(ph.x)
3. 2.で得られた結果を実空間にフーリエ変換し、force constantを計算(q2r.x)
4. 3.で得られた結果を任意の波数にフーリエ変換(matdyn.x)
3., 4.の過程ではacoustic sum ruleを用いることで、計算誤差によるimaginary phonon modeが出ないようにすることができる。

Siでの計算例は[1A]に、Acoustic Sum Ruleに関しては[1B]にある。

scf計算

フォノン計算する際に、誘電率も計算したい場合、occupationsでsmearingを設定しないこと。
半導体であってもsmearingに設定していると、金属と判断されてしまう。

フォノン計算

フォノン計算の入力ファイルを用意する。
バンド分散を計算する場合は、ldisp=.true.とし、q点のメッシュを指定する。

誘電率を計算したい場合、epsil=.true.とするが、Γ点でしか計算できないため、ldisp=.flase.とし、Γ点(0 0 0)を指定する。また、上述したように金属では計算できないため注意が必要である。

実空間へのフーリエ変換

ph.xで計算したdynamical matrixをq2r.xを使って実空間にフーリエ変換する。

波数空間へのフーリエ変換

任意の波数のフォノンの情報をmatdyn.xで計算する。

フォノンの状態密度(DOS: Density Of States)を計算する場合は、dos=.true.とする。

フォノンのバンド分散を計算する際には、dos=.false.とし、q_in_band_form=.true.とする。

計算するq点の情報を入力する必要があるが、逆格子ベクトルで指定しても良いし、Γ=gG、X, Aのように記号で指定することもできる。(個人的には記号で指定するほうが間違いがなくて良い。)

誘電率の計算

GaAsのフォノン計算の例に誘電率についての記載がある。[2]
ph.x のinputファイルにおいてepsil = .true.とすればoutputファイルに、Dielectric constant in cartesian axisが出力される。
※GaAsのような分極をもつ材料の場合、LOフォノンとTOフォノンがΓ点で分裂する。
[2]ではそのことに言及されていないが、正しいフォノン分散を得るためには必要不可欠である。

さて、誘電率は格子系誘電率と電子系誘電率に分けられる。
周波数0の誘電率のみで良ければ、電子系誘電率はepsilon.xから、格子系誘電率はph.xから求めることができる。[3]

Siのepsilon.xの例は[4]にある。Si, GaAsの例は[5]にある。

EPWを使ったフォノン計算

GaNのような分極を持つ材料の場合、フォノンのLO-TO分裂を考慮して計算を行う必要がある[6]。
Quantum Espressoの中に組み込まれているEPWのExampleにGaNの計算例があるので、分極を持つ材料の計算を行う際には参考にするとよい。[7]

 

参考文献

[1] qe-tutorial 3.3.1 9. フォノンの計算
http://www.cmpt.phys.tohoku.ac.jp/~koretsune/SATL_qe_tutorial/phonon.html

[1A] 雑多な記録 フォノンの計算
https://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~koudai.sugimoto/dokuwiki/doku.php?id=quantumespresso:phonon:%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%A8%88%E7%AE%97

[1B] Quantum ESPRESSO入力ファイル作成手順14.Phonon計算(バンド構造)
https://qiita.com/xa_member/items/5c02fcae08431588659d

[2] Quantum EspressoでGaAsの誘電率を計算する
https://ma.issp.u-tokyo.ac.jp/app-post/5248
[2A]Phonon Dispersion (GaAsでの計算例)
https://pranabdas.github.io/espresso/hands-on/phonon

[3] PWscf v.6.4 (TDDFPT, GW, BSE, epsilon)
https://www5.hp-ez.com/hp/calculations/page389

[4] Dielectric constant
https://pranabdas.github.io/espresso/hands-on/epsilon/

[5] III-V半導体の光学特性の解析
https://ctc-mi-solution.com/iii-v%E5%8D%8A%E5%B0%8E%E4%BD%93%E3%81%AE%E5%85%89%E5%AD%A6%E7%89%B9%E6%80%A7%E3%81%AE%E8%A7%A3%E6%9E%90/

[6] GaNのフォノンバンドが出てくる
https://mp-coms.issp.u-tokyo.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2022/09/lec7_mpcoms2022.pdf
AlAsだが、LO-TO分裂の計算例
https://www.fisica.uniud.it/~giannozz/QE-Tutorial/handson_phon.html
https://www.quantum-espresso.org/wp-content/uploads/2022/03/phonons_tutorial_shanghai1.pdf

[7] EPW example GaN
https://docs.epw-code.org/doc/GaN.html
EPW使い方
https://www5.hp-ez.com/hp/calculations/page312

GaAsでのフォノン分散の計算を報告した論文

https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.43.7231

GaN点欠陥形成エネルギーを計算した論文
https://sciencompass.com/phys-engineer/semiconductor_physics/gan_point-defects_dft

1 comment on 第一原理計算(Quantum Espresso)によるフォノン計算

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