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半導体物理

【高周波トランジスタ】化合物半導体の物性

投稿日:2019年1月3日 更新日:

現在のスマートフォンや衛星通信を支える高周波デバイスには化合物半導体が広く用いられています。ここでは、各種半導体の高周波特性に関係のある物性についてまとめます。

化合物半導体

半導体は元素半導体と化合物半導体の二種類があります。化合物半導体の代表的なものは、III-V族半導体と呼ばれるGaAsやGaNがあげられます。化合物半導体は結晶中の電子移動度および飽和速度が大きいといった特徴があります。こうした特徴は、高周波動作をするマイクロ波トランジスタに適しており、現在ではGaAs, GaNの高周波トランジスタが実用化されています。

化合物半導体の物性値

代表的なIII-V族化合物半導体の物性値について表にまとめます。[math]m_{0}[/math]は自由電子の質量を表します[1], [2]。

 

有効質量

m*/m0

移動度

μ 

(cm2/(V・s))

飽和速度

vs

(107 cm/s)

バンドギャップ

Eg

(eV)

絶縁破壊電界

Ecr

(106 V/cm)

JFOM

vsEcr/2[math]\pi[/math]

Ge 0.22 3000 0.6 0.8
Si 0.32 700 1 1.12 0.3 1 (1)
SiC 900 2 3.26 2.2 15 (215)
GaAs 0.063 4600 1.8 1.42 0.4 2.4 (5.8)
InP 0.08 2800 2.4 1.35 0.5 4 (16)
InGaAs 0.032 7800 2.1 0.78
InAs 0.022 16000 3.5 0.35
GaN 0.2 1150 3 3.42 3.3 33 (1089)

※InxGa1-xAsのx=0.53, JFOMの括弧内の数値はJFOMを二乗した値

この表にまとめた物性値からわかる通り、GaAsの電子移動度はSiに比べて6倍近く大きく、InPでも4倍近く大きいです。この電子移動度の高さが高周波デバイスにとって魅力的な特徴であるため、GaAsを始めとする化合物半導体を使った高周波デバイスの開発が進められてきました。現在では、GaAsやInPに代わって、GaNを使った高周波デバイスの開発が進められています。GaNの電子移動度はGaAsやInPに劣っていますが、バンドギャップが大きいため、絶縁破壊電界が10倍近くも大きく、より高出力なデバイスを作成することができることがその理由の一つです。表の一番右にSiを基準にしたJFOM (Johnson’s Figure of Merit)を示しています[3]。JFMの2乗が高周波デバイスの出力に比例します。

電流利得遮断周波数

さて、電子移動度および飽和速度が大きいことは高周波デバイスに魅力的だという話をしましたが、その理由についてごく簡単に説明します。

FETの高周波特性を評価する指標として電流利得遮断周波数[math]f_{T}[/math]があります。電流利得遮断周波数はこれ以上周波数を上げると、利得が1以下になってしまう周波数のことを言います。逆に言うと、[math]f_{T}[/math]が大きければそれだけ高周波で利得が得られるデバイスになります。[math]f_{T}[/math]はスタッツらの理論によると、次の式で表せます。

[math] \displaystyle f_{T} = \frac{g_{m}}{2\pi C_{gs}} = \frac{v_{s}}{2\pi L} [/math]

この式から、[math]f_{T}[/math]を大きくするには[math]g_{m}[/math]を大きく、[math]C_{gs}[/math]を小さくすることが必要である。[math]g_{m}[/math]を大きくするには、飽和速度[math]v_{s}[/math]を大きくするのが有効です。このため、化合物半導体が高周波デバイスには広く使われるようになっていきました。

Johnson’s Figure of Merit

Johnson’s Figure of Meritが高周波デバイスの指数として使われる理由を説明します[3]。まず、JFOMは次のようにあらわされます。

[math]JFOM = \displaystyle \frac{v_{s}E_{cr}}{2\pi}[/math]

ここで、電子の飽和速度[math]v_{s}[/math]は、電流利得遮断周波数[math]f_{T}[/math]によって次のようにあらわされます。

[math]v_{s} = 2\pi L f_{T}[/math]

[math]L[/math]はFETのゲート長になります。破壊電界[math]E_{cr}[/math]を印加しているときのゲート譚での電圧[math]V_{cr}[/math]は、

[math] V_{cr} \propto \displaystyle \frac{E_{cr}L}{2}[/math]

のようにあらわされます。したがって、JFOMは

[math] JFOM \propto \displaystyle \frac{1}{2\pi} 2\pi L f_{T} \frac{2V_{cr}}{L} = 2f_{T}V_{cr}[/math]

となり、電流利得遮断周波数と破壊電圧の積で表されます。FETの出力は、

[math] P \propto IV = g_{m}V^{2}[/math]

ですので、 最大の出力が得られるのが破壊電圧をかけたときと考えれば、

[math] \displaystyle P_{max} \propto g_{m}V_{cr}^{2}  \propto \frac{(JFOM)^{2}}{f_{T}^{2}}[/math]

となり、JFOMが出力の目安として使用できることがわかります。また、同時に電流利得遮断周波数が増加するにしたがって、出力が下がることもわかります。

参考文献

[1]高山洋一郎 著, “マイクロ波トランジスタ”

[2]Farid Medjdoub, “Gallium Nitride (GaN) Physics, Devices, and Technology”

[3]E. O. Johnson, “Physical limitations on frequency and power parameters of transistors,” RCA Review, vol. 26, pp. 163-177, June 1965.

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