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総理にされた男、月光のスティグマ【読書感想文】

たまたま書店で中山七里著”総理にされた男”が特集コーナーで紹介されていたのを見つけ、最近ビジネス書や学術書しか読んでおらず、たまには小説を読んでみようかと思い購入しました。

総理にされた男のあらすじ

売れない劇団員の主人公だが、総理大臣とうり二つの見た目をしており、劇団でも本人かと間違えるほどの物まねを披露しています。そんな折、総理大臣が病に倒れ、内閣官房長官から総理の代行を頼まれます。一般市民がいきなり総理大臣にされて、党内での仕事や国会の仕事にどう立ち向かうのか。そんなエンタメ小説です。

総理にされた男の感想

この本が題材にしているのは、東日本大震災後に民主党政権の支持率が急落し、解散総選挙によって自民党に政権交代がなされた後の日本です。ちょうどこの本が連載されていたのも2013年~2014年なので、まさにその当時の政治情勢を描いた本です。私も民主党政権時にはあまりにも酷い政治運営にひどくがっかりした記憶があり、そこから政治家に対して金と権力に固執するだけの汚い人間というイメージがついていました。ですが、この本を読み始めると、そんなイメージが先行してしまって政治について真剣に考えていなかったことに気づかされました。この本の中では、主人公に総理大臣の仕事を説明するという体で、政治の基本について説明があります。これらの説明を読んでいて、なんとなく知っている単語だけど、良く知らないし、どのように政治が動くのか考えたこともなかったと思いました。

どういう政治が理想の政治なのか、それを改めて考えさせられる本でした。言い換えるなら、自分が政治家になったらどうするのか、そういう思考実験をしている、あるいは思考実験の一例を見せられている感じです。思考実験をすることで、自分の視野が広がり、社会の見方が変わってくる、そんなことを思いました。本を読んで得られたことはビジネス書や新書に近いですが、あくまで小説であるため非常に読みやすかったです。

この総理にされた男を読み終わった後、他の人はどういう感想をもったのか調べてみたところ、googleから面白い検索ワードを提示されました。

”総理にされた男 月光のスティグマ”

月光のスティグマ?いったいなんだと、思って調べてみると、どうやら中山七里さんが総理にされた男と同時期に書いた小説で、共通の登場人物も出てきて、しかも二つの作品に仕掛けが仕込まれているとしり、さっそく買って読んでみることにしました。

月光のスティグマのあらすじ

主人公は一卵性双生児で見た目がうり二つの少女と幼少期から中学生まで過ごしていた。ところが、自分の兄を少女のどちらかが殺害するところを目撃し、その直後震災によって三人はバラバラになってしまう。
その15年後、特捜部に勤める主人公は、捜査のために訪れたNPOで、少女と再会する。

月光のスティグマの感想

この小説はいい意味で期待を裏切られ続ける小説でした。はじめは小学生時代の主人公たちが森でお医者さんごっこをしているところから始まります。このまま淡い恋物語が続いていくから、その伏線かなと思っていたら、不審者が現れ少女が傷つけられるというショッキングな展開になります。その後も、主人公の兄が少女に刺されて、殺害されたり、震災によって両親を失うなど怒涛の展開が続きます。

ところが、これらはまだ序章に過ぎず、舞台は特捜部へと移ります。主人公は不信な政治資金の流れを調べるためにNPO法人に潜入しますが、そこで幼馴染の少女と再会します。少女はNPO法人の理事を務める国会議員の私設秘書をしていました。議員を信奉している幼馴染への気持ちと仕事の責任の間に揺れながら仕事を進めていきます。そして、決定的な証拠をつかむために外国に赴いたところ、そこでテロに巻き込まれて・・・と最後まで怒涛の展開が続きます。

この本で出てくる国会議員は、総理にされた男の中でも出てきます。そのため、はじめてこの小説で登場した時には、なるほどこの人かと思っていました。議員にかけられている汚職の容疑ですが、まさかテロ事件とつながることになるとは、とびっくりしました。この小説を読んでからだと、総理にされた男の最終章、vsテロはまた違った楽しみ方ができます。また総理にされた男を読みたくなる、そんな小説でした。

この本自体も、展開がどんどん変わる小説で、先の展開が読めないため、夢中になって読んでしまいました。怒涛の展開の連続で、ある種の興奮状態になってしまい、読み切ったときには、総理にされた男とつながった、という爽快感、重厚なフルコースを食べたかのような満足感、走り切ったという疲労感がごちゃ混ぜになったような気持ちになりました。この2冊は絶対まとめて読むべきだと思います。

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