パワー半導体の分野では高効率・高出力化に有利なSiCが広く使われるようになってきている。
SiCパワーデバイスはSiC基板上にエピタキシャル成長してデバイスを作成する。エピタキシャル層の品質を上げるためには、SiC基板の品質向上が不可欠である。
SiC基板の加工時のダメージや欠陥の量を減らすことがエピタキシャル層の品質向上につながる。
SiC基板表面の欠陥を評価する手法として、ミラー電子顕微鏡技術が応用されている[1]。
ミラー電子顕微鏡の原理を簡単に述べる。
走査電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡と同じように電子銃から電子線をレンズにより平行な電子線として試料に照射する。ウェハー表面には電子銃の加速電圧ほぼ等しい負の電圧をかけておくことで、電子線はウェハ表面に到達する前に減速し、一定の表面電位の面で反射する。電子が反射することからミラー電子顕微鏡と呼ばれる。
欠陥を検出するためにはどうするか。試料にあらかじめバンドギャップよりもエネルギの高い紫外線を照射する。もし、ウェハ表面に欠陥が存在する場合、欠陥部分が帯電する。励起された電子がトラップに捕獲され、負に帯電すると表面電位の等高線が変化し、電子線の反射の仕方が変化する。そのため、欠陥の存在する領域は暗くなり、欠陥を検出することができる。[2]-[6]
参考文献
[1]https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2018/06/11b06/index.html
モビリティシステムの信頼性を支えるミラー電子式検査装置Mirelis VM1000
[2]品田博之,外:次世代の高速高感度検査,日立評論,94,2,198~203(2012.2)
[3]長谷川正樹:ミラー電子顕微鏡による微小欠陥検出,応用物理,87,7(2018.7)
[4]M. Hasegawa et al.: Non-destructive observation of in-grown stacking faults in 4H-SiC epitaxial layer using mirror electron microscope, Journal of Applied Physics(2011.10)
[5]T. Isshiki et al.: Non destructive inspection of dislocations in SiC wafer by mirror projection electron microscopy, Materials Science Forum(2014.2)
[6]T. Isshiki et al.: Observation of a Latent Scratch on Chemo-Mechanical Polished 4H-SiC Wafer by Mirror Projection Electron Microscopy, Materials Science Forum(2018.6)
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