Si MOSFETに限らず、SiCパワーデバイス、GaN HEMTにおいても高誘電率ゲート絶縁膜が用いられてきている。
高誘電率絶縁膜によって、ゲート酸化膜容量が増加しドレイン電流の増加につながる。また、SiO2よりも厚い膜厚で同じゲート容量を実現できるため、ゲートリーク電流の抑制も期待できる。
一方で、高誘電率ゲート絶縁膜を利用したSi MOSFETでは移動度の低下が確認されている[1]。これはソフトフォノン散乱と呼ばれる電子散乱によってキャリアの移動度が低下していることが原因だと示された[2]。
高誘電率膜は、イオン分極(金属-酸素結合の分極)の寄与が大きいために、誘電率が高くなっている。一般に金属-酸素結合はSi-O結合に比べて弱く、フォノンエネルギー(LO phonon)が低い。フォノンエネルギーが低いために、キャリアによってフォノン励起が起こりやすく、キャリア-フォノン散乱が生じる。
これはキャリアが走行するチャネルのフォノン(Siのフォノン)と直接相互作用するのではなく、高誘電率絶縁膜や界面近傍のフォノンと相互作用することから、リモートフォノン散乱あるいはフォノンのエネルギーが低いことからソフトフォノン散乱と呼ばれている[3]。
絶縁膜のフォノンエネルギーについてまとめてみる。
[1] E. P. Gusev, et al., “Ultrathin high-K gate stacks for advanced CMOS devices,” IEDM, p.451, 2001.
[2]M. V. Fishetti, et al., “Effective electron mobility in Si inversion layers in MOS systems with a high-k insulators: The role of remote phonon scattering”, J. Appl. Phys., 90, p.4587, 2001.
[3]塩野 登, “高誘電率ゲート絶縁膜の信頼性”, REAJ誌 2007 vol.29, No4 p.198.
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